東工大建築学専攻塚本研の活動をレポートしていきます。

2011年9月10日土曜日

アーキエイドサマーキャンプ展覧会

塚本研究室修士1年の河西です。
9月3日から1週間、ヨコハマトリエンナーレ「新・港村ー小さな未来都市ー」にてアーキエイドサマーキャンプの成果物を展示しています。
サマーキャンプは全国から集まる建築系研究室が牡鹿半島にある30の浜で住民にヒアリングを行い、住民とともに住みたい浜の将来像を提案するワークショップです。研究室から塚本先生、會田、袁、河西、側嶋、高橋が参加して、鮫浦湾に面する鮫浦(サメノウラ)、谷川浜(ヤガワハマ)、大谷川浜(オオヤガワハマ)、祝浜(イワイノハマ)の調査を行い、各浜の復興計画案を提案しました。また谷川浜に提案した漁業集約案は石巻市に採択され、実施に向けて計画が進行しています。自分たちで描いた計画案が復興の土台として使われていることを大変嬉しく思います。
ここでは9月3日のサマーキャンプ報告会、4日に行なわれた釜石市復興プロジェクトチーム、岩間正行さんと塚本先生の対談についてレポートします。


1.展示について

fig.塚本研究室の展示

上から浜の現状写真、リサーチマップ、復興計画案マップ、アイソメパースと手書きパースで構成しています。
ここでは谷川浜の現状と提案について紹介します。

fig.谷川浜の現状写真

津波で防波堤、船着場、漁業作業場を失い、地震で漁港が地盤沈下して船が着けられず、漁業を再開できていません。

fig.谷川浜のリサーチマップ

津波は地図の赤いラインまで到達。56世帯のうち55世帯が被災して、住民は大原町の仮設住宅や石巻のアパート等で生活しています。

fig.谷川浜のi復興計画案

漁港再整備、高台移転、漁港集約を提案。漁業集約案は前網浜・鮫浦・泊浜・谷川浜4集落の漁業機能を集約させます。

fig.サマーキャンプの活動写真

展示では浜の踏査、住民ヒアリング、図面制作の様子も見ることができます。

fig.牡鹿半島全体の模型

展示ブース内に牡鹿半島全体の模型が展示されています。私たちが担当した浜は東エリアに位置しています。模型を見ると牡鹿半島の複雑な地形がよくわかります。

fig.報告会の様子

展示初日は東洋大学藤村研究室と一緒に報告会を行いました。
サマーキャンプ生活はヒアリングで震災以前の浜での生活、津波が到達した時の記憶、復興に対する強い想いを住民の皆さんから受け取り、復興計画案を図面に手書きで描く作業が主でした。校庭に仮設住宅が建ち並ぶ旧大原小学校に宿泊させてもらい、被災された皆さんと交流できたことは復興を考える立場として良い経験になったと思います。


2.釜石市復興プロジェクトチーム参与岩間正行さんと塚本先生のディスカッション

fig.岩間正行さんと塚本先生の対談の様子

展示2日目は「被災地の漢シリーズ」という被災地で復興に向けて奮闘する漢(オトコ)と建築家が対談するイベント第一弾が開催され、釜石市復興プロジェクトチーム参与、岩間正行さんをお招きして釜石市の話をお聞きしました。岩間さんは釜石市の職員であり、定年退職の20日前に震災に遭遇。震災後いち早く復興チームを立ち上げるとともに先を見据えた支援人材の組織化などに尽力。伊東豊雄氏など建築家の力を借りながら、市民によるワークショップを積み重ね、復興計画を立ち上げています。
岩間さんのお話で印象に残ったことは、「街の再建には時間が必要で、時間をコントロールできるのが建築家である」と説明されたことで、街の歴史や今の姿、住民の希望などを吸い上げて、時間軸の中に位置づけていくのが建築家の仕事であると考え、復興の指揮官に建築家を採用したアイデアに感銘しました。塚本先生は“ふるさと“という言葉を用いて「長い時間をかけてつくられてきた街を未来へ繋げていくと考えれば、復興は大きな時間軸の中で“ふるさと“をつくっていくことである。昔この街に住んでいた人、将来ここに生まれてくる人のためにつくっていくことが大事である。」と復興の位置づけについてコメントしていました。

fig.ディスカッション会場の様子